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absolute zero

DRRR!!、タイバニに首っ丈な小説ブログ

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久し振りの更新かもしれませぬ

やっと続いたね、卯月です。
もう、書きかたを、忘れているような気もします…この話(爆)

余談ですが、漫画研究サークルに入ったよ!(笑)

 








『神崎なんて人、オレは知りませんー』
「……オマエ…」

漸く時間が取れたので再び西月家にリダイヤルをしてみれば、完璧にグレた状
態のかずまがワンコールでそう告げた。どうやら電話が掛かって来るのを知っ
ていて待っていたようだ。
てっきり再びミクが出ると思っていたので突然聞こえてきた友人の声に面喰ら
ったが、其れよりも大人げなさ過ぎる挨拶の所為か脱力感に見舞われる。序で
に情けない声が出てしまった気がする。
一体かずまが何に対して怒っているのかが解らないが、ミクに相談するにしろ、
かずまに話を聞いて貰うにしろ機嫌を直して貰わなければならない。
何か物ででも釣ってみるかと考えたが、今回は逆に挑発してみることにした。

「かずま、何を拗ねてんだよオマエ!精神的に何時までもコドモだから身長伸び
ないんだろ!?」
『ううううるさーい!ウチの子に手を出そうとした悪い虫は排除ー!!』
「はぁ?手を出そうとって…』

一体誰に、と言葉が続く筈だったが、途中で気が付いた。昼間のミクに対しての
電話について言っているのだろう。
とんだ言い掛かりだと反論してやろうかと思ったが、口に出す寸前で言葉を飲み
込んだ。今までの経験からして、今回の怒り度は七十パーセントくらいと推測出
来る。
下手に口を挟むと悪化する恐れがあった。我が友人ながら、非常に面倒くさいと
思う。
どう切り出すべきかと受話器を片手に頭を抱え始めた時、電話の向こうで何を喋
っているか聞き取ることは出来なかったが可憐な声が聞こえてきた。その直後、
何かにぶつけたような鈍い音と『ぐわっ…!』という短い呻き声が洩れ、時間差で
受話器自体が床に落下したような音が響く。
何事かと少し心配になったが、俺が訊ねる前に受話器の向こうで『きゃーっ!しっ
かりしてマスター!』と焦った声でミクが叫んでいた。

「……もしかして死んだ?」
『え、縁起の悪いこといわないでくださいー!』

訊ねるようなイントネーションだったが一人言のつもりだったので、突如はっきりと
俺に向かって発された言葉に驚く。どうやら思わず呟いた一言がミクにはきちんと
聞こえていたようだ。

『どうしよう、れんれんさーん!マスターが床で頭打ったまま動きませんー!!』
「え、故意?事故?」
『わ、わざとだなんて…そんな事出来ません!マスターの誤解を解こうとしたらミ
クが転んでぶつかっちゃって、その所為でマスターがバランス崩して…うわーん、
御免なさいマスター!』
「え、ちょ、えぇぇ!?」

本格的に泣き始めたミクにどう対応すればいいのか判らない。途方に暮れていた
俺は受話器の向こう側で繰り広げられている惨劇――泣き声らしきものと、『ミク…
ゆら、さな…っし、しんでな…』と小さく聞こえる呻き声らしきものを聞きながら、盛
大に溜め息をついた。













『――声が、出せなくなったんですか?』

復活したかずまはミクから説明されたのか、心配が杞憂な物だと解っている様子
らしい。何も口を挟んで来ないのが何よりの証拠だ。
それは置いておいて、ミクの問いに電話だというのに頷いた俺は理由はまだ不明
なんだけど、と呟くように付け加える。
何時から症状が出たのか、起こる兆しはなどと、幾つか質問をされたが突然の事
だったということくらいしか答えられなかった。何もかも、はっきりとしたことは解ら
ないのだ。



一緒に暮らして、カイトの事を解ってるつもりだった。実際はそんな事ない。知っ
ていてもほんの一部に過ぎないのだ。

俺は、アイツのマスターなのに。




『――れん、れんれん?』

突然の呼び掛けに我に返った。いつの間にか電話の相手がかずまに代わって
いる。

「あ…、あぁ…考え事してた」
『大丈夫かー?突然黙り込んだってミクが言うからびっくりしたよ』
「ん、悪かったな。…で、何か検討は…」

受話器の向こうでかずまがあー、と呻いた。その曖昧な返事で、あぁなかったの
だな、と漠然と感じていた。
の、だが。

『どーにも状況が掴めないからはっきりとは言えないんだが、ウイルスの一種な
んじゃないかってミクが言っててさー』


「――は?」
『え?だから、ウイルスの一種じゃないかって…』

思わず聞き返した俺に、かずまは同じ言葉をわざわざ繰り返してくれた。別に聞
こえなかった訳ではなかったのだが、ただ単に返事が思っていたものと違ったか
ら驚いただけだった。
あまりにもあっさりとした口調でかずまが原因と思われる現象を口にした。まだ、
あくまで可能性でしかないのだが、それでも何も言われないよりはマシだ。
しかし、この場合のウイルスと言えば――コンピュータが感染する物のことだろう
か。…普段だったら思い付きもしないが。
かずまに訊ねてみれば、それ以外に何があるんだ、と逆に問われてしまった。

「いや…ボーカロイドもウイルス感染するんだ、と思って…」
『そりゃするさ、身体が機械なんだし』
「だ、だって聞いたことも無かったし」
『元々アンドロイド型は少ないしねー、……だけどさ――』

ほんの少し気分が浮上しかけていた俺を再び不安にさせるように、かずまは言葉
を切るとそのまま押し黙ってしまう。考え込んでいるのか、呻き声とも吐息ともとれ
そうな音を溢したかずまがだけど、と繰り返した。

『人間は風邪を引いたら体が自然と不調を訴えるよね、それ以上悪化しないように
対処してもらうように』
「……?そう、だな」
『ボカロだって、そんな機能があるんだよ。パソコンで言うならウイルスバスターみ
たいなさ』
「へぇ……」
『だから、そんな症状が出る前に何かしらの警告が出る、筈なんだけど…』

だけど、の後に続く筈の言葉は発されなかったが、言いたいことは理解出来てしまっ
た。
突然すぎる重い症状に、全く動作しなかった警告。



――恐らく、カイトには大きな欠陥があるのだろう。俺も知らないようなものが。



『ウイルスだけなら、手遅れじゃなければウイルス駆除ソフトでなんとかなると思う。
取り敢えずそれだけでも試してみたら?』
「……そう、だな」
『それでも駄目だったらまた連絡してよ。れんれんもよく知ってるメンテの人いるから、
そっちに連絡しよう』
「………」

『――蓮珠?』

いつになく心配そうな、友人の声。
これ以上心配させるのは心苦しいと感じ、俺は只、解ったから色々有り難うと告げ
ると電話を切った。『ちょ、ま、蓮珠――』と焦ったような声が聞こえたが、俺の耳に
は入らない。
あまりに一方的で、まるで逃げたみたいだった。こんな事すれば、益々心配させる
だけだと知っているのに。
わかった、なんて言ったが嘘だった。実際には途中から頭にかずまの言葉の内容
は入って来なかった。

それ程の欠陥があればカイト自身も知っている筈。初めから欠陥があったのか、
それとも俺の家に来てからなのか。どちらにしろ何故、俺には何も言わなかった。俺
がそんなにも頼りなかったから?




違う。
俺が気付こうともしなかっただけじゃないか。




『―ー俺はマスターを嫌いになんてなりませんから、俺もマスターの事、好きでいて
もいいですか?』

情けなく泣いた俺に、カイトはそう言った事があった。歌えなくてもいいから一緒にい
たい、と。



本当に?
状況に甘んじて、お前の事を理解しようともしなかった俺なんかと一緒にいたいと言っ
てくれるのか。嫌いにならないでくれるのか。




そこまで考えて、ふと思う。
好きでいてもいいですか、とはどういう意味合いだったのか。
あの頃の俺は、告白みたいなこと、と思った上によく理解していなかったが…
言葉通り告
白だったら。

『自分の気持ちは分からなくても、俺のマスターに対する気持ちは分かりました?』

夢でそう問われてから、まともにカイトの顔が見れなくなった。実際に言われた訳
でもないのに恥ずかしかったからだ。
アイツが俺をどう思っているかなんて知らない。



だけど俺はあの日から、カイトのことばかり考えている。



「おれ、は」



だらりと腕が下がり、手から携帯電話が滑り落ちた。硬い音が響く。
頭に、ノイズが鳴り響く。自分の感情がノイズに邪魔されて、ぐちゃぐちゃになっ
ていた。



もう一度。
もう一度だけ同じ言葉を俺に聞かせて欲しい。
そうしたらノイズで消えた答えがわかりそうだった。











今、一番聞きたいのは
失われたアイツの声で
(――記憶の声じゃない、本物が聞きたい)




09.4.14

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