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absolute zero

DRRR!!、タイバニに首っ丈な小説ブログ

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何故こうなった!

今回こそホラーにしたかった、卯月です。
今度こそ、今度こそ…とか思っていたはずなのに、気が付いたら怪レスで中学生編とか書いてた。
やっぱ恋愛するならもう少し歳がいるよね!とか思ってたのに全く恋愛してないし!!
しかもアコがいない不思議。あるぇー?

個人的にはレイコが出せたので、満足満足!(爆)












忘れ物を取りに教室まで戻り扉に手を掛けた時、中から人の声が聞こえて思わず手を引いた。
教室から声が聞こえる事くらい当たり前なのだが、それは昼間の話だ。日が暮れかけている今の時間帯、
部活動をしている部屋以外は人がいる方が珍しい。
誰かが教師にでも居残らされているのだろうか、と扉は開けずに耳を澄ませてみた。

「――悪いけど、僕はまず君の事を知らないから」
「解っています、けど、私は貴方のことが、」

聞こえてくるのは男女の会話のようだが、どう考えても談笑とかの類ではない。
…女生徒から男子生徒への告白の真っ最中のように聞こえたような気もする。
しかも不味い雰囲気へと向かっている途中の。
教室なんて人に見付かりやすい場所は止めればいいのに、と思いながらも
扉を開けても良いものかと悩んだ。このままでは何時まで経っても忘れ物を取りに行けない。
そんな考えを巡らせている間にも教室内で繰り広げられる会話は進むわけで。

「僕が君を知らない、君だって僕の事は知らない。それで特別な感情は生まれる訳がない」
「貴方は私を知らないかもしれないけど、私は貴方をずっと見てて――」
「…見ているだけで僕の何が理解できたか知らないけど、僕は君とは付き合えないから」

もう少し言い方があるのでは、と思わざるを得ないような男子生徒の物言いに相手の女生徒が
耐えきれなくなったのか、急に押し黙ったかと思えば此方に――扉に近付いてくる気配がした。
真正面からの鉢合わせだけは勘弁したいので、聞き耳を立てていた扉から慌てて距離を取ったが、
何の変哲もない廊下に隠れる場所が在るわけがない。
出来ることは、恰かも今通りすがったように見せ掛けるくらいだろうか。
が、派手な音を立てて開かれた扉から飛び出し走り去っていった女生徒は、
周りが見えていなかったのか此方には全く気が付かなかったようだ。
鉢合わせ等いうと考えが杞憂に終わった事を喜ぶべきか、それとも今飛び出した子に同情するべきか。
どちらにしろ教室内に一人残っているであろう彼が元凶なのは変わらなかった。
ひょい、と教室内を覗くと案の定、無駄に整った顔立ちの男子生徒が一人、
何事も無かったかのように帰り支度を始めていた。

「…今年に入って何人目かしらね、告白されるの」
「………レイコ」

私が遠慮も無しに声を掛けると、彼――甲本ショウも此方に気が付き、
思いっきり顔をしかめながら私の名前を呼んだ。実に失礼な反応だと思う。

「態々聞いていただなんて、悪趣味だね」
「バカね、偶然に決まってるでしょ」
「…まぁ、そういうことにしておこうか」

呆れたような表情で肩を竦められ、少しだけ怒りを覚えたが、ぐっと堪えた。
彼相手にそんな事をしても挙げ足取りの材料にしかならないから。

「貴方に告白する人も可哀想に、全員あんな言い方で断っているの?」
「皆言うことは一緒、ずっと貴方を見てましたってね。見ていただけで告白なんて、
  好きになったと錯覚しているだけだから」

そりゃ見た目だけなら美形だからとか、性格悪いと知ってれば皆告白なんてしないとか、
言ってあげたい事は沢山あったが敢えて言わないでおく。本当に、
顔はいいのに性格が全てを台無しにしている。
しかし、此方に引っ越してから彼此三年以上、極力人との関わりを持たずに過ごしてきた彼が
告白を一々直接会って断っていただなんて初めて知った。
てっきり、呼び出されても無視、なんていう暴挙に出ると思っていたのに。
意外な所で思い遣りを見せるのだな、なんて漠然と思った。

「もう、いっそのこと彼女の一人でもつくったらいいんじゃないかしら」

そうすれば言い寄ってくる子も減るし、と軽く言って見ると、
直ぐに流されると思っていたのに何故か真剣な顔で悩まれてしまった。まさか前向きに検討されるとは。
と、思いきや段々と彼の表情が憂いを帯びた物へと変化していった。
こんな表情をするのは、端から見ると解りにくいが割と落ち込んでいる時である。

「…この前もそうやって言われたんだけど」

誰に、なんてこの際聞かないが、この男にそんな事を言えるのは私を除けばあと一人しかいない。

「だったら僕と付き合ってみない、って言ったら、」
「………そしたら?」



「――『またそんな冗談言って、ショウくんったら』……だって」



彼が決して冗談なんかで言っている訳ではないのは解っている。
が、それはもう付き合いが長いのと普段の態度が悪いとしか言えなかった。
赤く燃える空を遠い目をしながら眺める彼が「どうしてこうも儘ならないかなー…」と小さく呟く。



その様子を見た私は心の中で一言、何だか異様に愉悦に浸りながら呟いた。





ざまぁみろ、と。


















(でもまだ諦めてないみたいね、この男)
(そしてまた外見に騙された子が振られに来るんでしょうね)
(……ああ、あの子が気付くまで続く悪循環)





10.2.21
 

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