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absolute zero

DRRR!!、タイバニに首っ丈な小説ブログ

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タイトルで内容が把握できる不親切設計

久し振りの更新、書けば書くほどアホな展開になっていく罠。
もっと黒いカイトが…もっと腹黒になるはずだったのに!
多分、昼間にヘキサゴン見ながら書いたのがいけないんです。

 





がしゃん、と何かの割れる音に驚いて顔を上げた。
床を見ると白い陶器が欠片になって散らばっている。何時もならば直ぐに拾う
等の行動を起こすのに、頭に靄がかかったように意識がはっきりせず、体も思
うように動かない。
それでも欠片を拾おうと、緩慢な動きで皿の落ちた場所まで向かいしゃがみ込
む。指先に触れた陶器が別の欠片に当たってかちゃん、と音がなった。
粗方拾い終わって立ち上がって漸く自分が台所に居る事に気付いた。何しに来
たのか全く思い出せないが、今は取り敢えず割れた皿の処分が先だろう。不燃
ゴミの袋を出す為に踵を返そうとした時、


「――マスター?」
「うわぁぁあ!?」


突如、後ろから掛けられた声と共に肩を掴まれて思わず悲鳴を上げてしまった。
それと同時に皿の破片から手を離してしまい、再び床に陶器が落ちた音が響く(
折角拾ったのに!)
俺に声を掛けた人物も、急に上がった悲鳴と物の落ちる音に驚いたらしく「わぁ!
」と間抜けな声が聞こえてきた。声の方向を向くと、目を見開いて呆然とするカイト
がいた。


「お…驚かさないで下さい、マスター!」
「ばっ…こっちの台詞だぞ、それ!」


胸に手を当てながら文句を言う辺り、かなり驚いたらしい。しかし、カイトが急に声
を掛けたのが悪いのだから、自業自得だろう。


「ていうかマスター…皿割ったんですか!しかも指!」
「へ?」


肩越しに皿の残骸を見たカイトは、俺を見て更に青ざめた。指、と言われて自分の
手に視線を向けると、右手の人差し指から血が流れている。
全く痛くも無かったし気が付かなかったが、よく見るとかなり深く切っているのが分
かる。破片を床に落とした時に切れたのか、白い陶器の角が所々赤く染まっていた。
しまった、と思いながら中指を見つめていたら、急にカイトが右手を俺に差し出して
口を開く。


「…マスター、指を貸して下さい」
「え、何で」
「いいから、貸して」


理由が解らず首を傾げるだけの俺に焦れたのか、カイトは半ば強引に俺の手を取
った。未だ止まる事なく血の流れだす人差し指を暫く険しい顔で見ていたカイトは、
躊躇う事無くその指を口に含む。思わず目を見開いた。
傷口を舌で舐められる感触に体温が上昇してゆくのを感じる。恐らくカイトには俺の
顔が赤く染まっている様子が見えるだろう。


「…血液って本当に鉄の味がするんですね」
「な、ななな…っ何を…っ!?」
「何って…応急処置ですよ」


否、確かにそうなんだけど、したい事はすごくよく分かるんだけど。でもこれって自分
でやるものなんじゃ。しかもオマエは鉄を食ったことがあるのか…何が言いたいのか
分からなくなってきた。
いきなりな状況に戸惑いながら話す俺とは対照的に涼しい顔をするカイトは、もう離し
てもいいだろうに飽きもせず俺の指を舐め続ける。


「…っ!いい加減に舐めるの止めろ!」
「分かりました」


あまりのしつこさに怒ると、カイトは口から指を拍子抜けする程あっさりと離してくれた。
しかし、腕は掴まれたままの状態を不審に思いカイトの手を振りほどこうとしたがびく
ともしない。力で適わないと分かっていても手を外そうとする俺を見たカイトは不適な
笑みを浮かべると、その無駄に整った顔を俺に近付けた。
至近距離で青い瞳に見つめられて、反射的に逃げようとするが逆に引き寄せられてし
まう。
何となくだが、この状況はヤバいと直感が告げていた。


「でもマスター、俺はただ治療をしただけなのにどうしてそんなに顔が赤いんです…?」


俺に教えてくれますか、とカイトは追い打ちを掛けるように耳元で囁く。普段より低めの
声を直接吹き込まれて更に顔が赤くなるのを感じた。
煩く鳴り響く心臓が早鐘のようだ。


「そんなの、俺にも分からない…っ」
「本当に?」
「ほ、本当に!」
「…そうですか」


楽しそうに笑うカイトは俺の耳元から顔を離すと、今度は左手で俺の頬をするりと撫でた。
顔が熱を持っているからか、カイトの指が何時も以上に冷たくて肩を震わせたがそんな
事を気に掛けてもくれない。
カイトは少し熱っぽい視線を俺に向けると期待の滲んだ笑顔を浮かべた。


「自分の気持ちは分からなくても、俺のマスターに対する気持ちは分かりました?」
「…へ?」


もう半ば泣きそうな顔の俺の返事にカイトは困った顔で溜息を付くと、再び顔を近付ける。
近いとかいう問題じゃない。カイトの端整な顔が間近に迫って俺の唇に――

 


気が付いたら見慣れた天井が視界に入った。ゆっくりと上半身を起こし、額に手を当てる。
じっとりと濡れていて、それが汗だと分かるまでに時間がかかった。


「…夢」


何だったのだろう、一体。
夢は願望の表れとよく言われるが、あんなのが俺の願望なのか。
あんなの、と考えて先程見た夢を鮮明に思い出してしまい、思わず悶絶した。畳の上
をごろんごろんと転がっていたら襖に激突したが。
打った頭を押さえながら襖を開けて外を見ると、まだ空は暗い。まだ二度寝の出来る
時間だ。
忘れよう、きっとそれが一番いい。
そんな結論に至った俺は余計な事を考えて怪我を増やさないように再び布団を被ると
襲い来る睡魔にあらがう事無く、そのまま眠りに落ちた。




08.5.3
 

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