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absolute zero

DRRR!!、タイバニに首っ丈な小説ブログ

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初ー!

初めてのボカロ小説。
…カイマスかと言われれば首を捻りますが、がんばっ…た?
欲望のままに書きたいものだけ書いているので、設定を先にお読みいただけると本当に助かります。

読んでやろう、という心優しい方は下からどうぞ。











――機械のくせに主人の言う事が聞けないのか!


…煩い。


――口答えするな、お前は黙って従っていればいいんだ!


煩い、うるさいウルサイ…!
確かに機械だけど自我を持つ俺には意見を言う権利も無いのか。ボーカロイド
として歌いたいと言うのはいけない事なのか?
嫌だ、そんなことはしたくない。そう告げればアイツは俺を傷つけた。
アンドロイド型になんか造られたくなかった。俺はただ、歌いたかっただけなの
に。


…お前なんかが俺の主人なものか!


両手で大きく振りかざした鈍色はそのまますとんと抵抗無く降ろされ――

 














「カイト!」


スリープモードが強制的に解除された。閉じていた瞳をゆっくり開くと、目の前
に心配そうに覗き込む、綺麗な顔が見えた。
今までのは只の記憶、この人はアイツじゃない。この人は――


「…マスター」


確認するみたいに呼べば、マスターは深く息を吐いて胸を撫で下ろす。目を覚
ました事に安堵したのか、よかった、と小さく呟いたのが聞こえた。
この人は俺の、一番最初のマスター。人を頑なに拒絶し続けていた俺に歌を、
感情を、居場所を与えてくれた人。
マスターは目を覚ましても微動だにしなくなった俺を見てまた心配になったのか、
もう一度声を掛けた。


「カイト、大丈夫か?うなされてたみたいだから起こしちゃったが…」
「いや…助かりました、嫌な記憶が再生されていたので。もう大丈夫ですが」
「そうか」


マスターが俺の言葉を聞いて薄く微笑むのを見ながら、俺は今まで寝かされて
いた布団から体を起こす。「ボーカロイドも夢を見るんだな」と呟いたマスターは、
そのまま俺の頭へと手を伸ばそうとした。しかし途中で俺がこの家に来てからの
一ヵ月間、人に触れられるのを極端に拒絶していた事を思い出したのか手を伸
ばすのを止めてしまった。
行き場を失った手を何度か握った後、下ろしたのを見て、自分でも何を思ったの
か全く理解できないがその腕を掴んでしまった。
……なんというか、細い。
標準男性を模した俺もあまりがっちりとしたタイプでは無く、大分細めに造られて
いたがマスターの腕はそれよりも更に細い。初めて触れたマスターの腕の感触
に驚いていると、それ以上にマスターの方が驚いていた。


「…カイト、手」
「え」


人間に触られるのが嫌で仕方がなかったのに、気付けば普通に触れている。不
思議と不快感は無い。
おずおずと、マスターが俺の頭に手を伸ばした。ぽふ、と優しく置かれた手はその
まま髪を掻き混ぜる様に頭を撫で回す。
暫くの間、触れることが出来たのが嬉しかったのか、マスターは俺の頭を撫で続
けた。放っておくと何時までも続けていそうだと思って視線を向けたら、慌てて手を
離してしまった。


「わ、悪い!触られるのダメなんだよな!?」
「……や、なんかマスター相手なら平気、みたいです」
「…うん?」


もう一度と思い、何だかいまいち事情が飲み込めていないマスターの腕を再び掴
むとそのままこちらに引き寄せる。へぁ、とマスターが妙な悲鳴を上げたが気にし
ている余裕は無い。
そんなに背が低い訳でも無いのに全体的に随分と細い上に華奢だと言える。腕を
回して抱き締めると、すっぽりと納まってしまった。俺の顎の下でマスターの黒髪
が揺れる。少し、くすぐったい。
まず人自体抱き締める事が初めてなので加減が分からない。少し力を込めれば
壊れてしまいそうで、何だか恐ろしかった。
いきなり自分よりも体格のいい男に抱き締められてか、益々状況が解らずに困惑
するマスターが腕の中から俺を上目遣いで見上げてくる。


「カイト…?」
「はい?なんでしょう」
「…何で俺が抱き締められてんの?」
「何でって、実験?」
「…疑問系か。つーか嫌なんだけど、男としてこの体勢」
「いいから黙って抱き締められてください」


俺の拗ねたような物言いにマスターはまだ何か言い掛けたが、途中で口を噤んだ。
マスターの性格から、もっと文句を言われると思っていたのに、俺の言ったとおり黙
って抱き締められていてくれるらしい。


「…まぁ、全部うなされるほど怖かったらしいお前の夢の所為にしてやる」


暗いため、視覚に自信はないがマスターの耳が赤く染まっている気がする。
そんなマスターの様子と不貞腐れた物言いに笑うと、不機嫌だった筈のマスターも
「そんな顔も出来るんじゃないか」と言って笑い、気に入ったのか伸ばした手で俺の
頭を撫でた。





08.3.10

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