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absolute zero

DRRR!!、タイバニに首っ丈な小説ブログ

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一体いくつで終わるか自分でも分からない

ようやく発展させようと重ったい腰を上げ始めた卯月です。
発展っつーか、なんか元々甘いし砂吐けるとか普段から言われているので、自覚編とか何もあったもんじゃありません。
途中で無理矢理ヤンデレフラグを立てたくなったり、ロマンチカ見ちゃって甘い展開になってきちゃったりと難産でしたが、全く途中です!
もう最初からくっついてる設定にすればよかった…(遅い)










ばくぱくと金魚のように口を閉じたり開いたり繰り返してみたが、何の意味も
為さなかった。その事実に愕然とした俺は、呆然と俺を見つめるマスターに
視線を合わせる。
必死になって口を開けながら喉に手を当ててみるのたが、人間でいうところ
の声帯にあたる喉の機能が完璧に停止していた。ボーカロイドにとっては一
番重要かもしれないこの機能はちょっとやそっとじゃ故障することなどあり
えない筈なのだが。


「カイト、どうかしたのかっ!?」


マスターが心配そうに俺に声を掛けてくれる。そんなマスターに不安を与え
たくはないから、大丈夫です、と一言伝えたいだけなのに。俺の喉は音を一
切発しなかった。


『声が出ない…っ!?』


存在意義を否定されているような事実を突き付けられた俺は、糸が切れた
人形みたいにその場に崩れ落ちた直後に意識がブラックアウトした。
――声が出ない事に一瞬何らかの安堵を覚えた自分自身に恐怖を抱きな
がら。

 










スリープの自動解除で覚醒した俺は未だ声が出せない事を再認識させられ
絶望に打ち拉がれた。喉からは微かに呼気が漏れるだけだ。
喉が完全に壊れていたとしたら、それすらも無い筈なので一応機能はして
いるようだ。声が出なければそんな物、全く意味が無いが。
辺りを見渡すが明かりが灯っていない為、暗い。どうやらかなり長い間意識
がシャットアウトされていたみたいだった。意識プログラムが途切れた場所
と現在の場所が一致していないということは、マスターが俺をこの部屋まで
運んだのだろうか。…マスターには悪いが、あの細腕で俺を運べたとは思え
ない。一体どうやって運んだのかが気になったが、そんな事はこの際置いと
いて。
俺は状況把握の為、運ばれたらしい部屋から出てマスターの姿を探した。
廊下は真っ暗で普通の人ならまともに歩くことは出来ない。この間マスター
が暗闇で歩いていて顔面から壁に激突していたな、とそう遠くない記憶を思
い出し、何と無しに灯りを点けた。
恐らくは自室にいるだろうと思い足を運ぶと、案の定いた。
部屋の電気も点けずに真剣な表情でパソコンに向かうマスターは俺が近づ
いていることに気がつかない。只、ひたすらパソコンのモニターを食い入るよ
うに見詰めている。モニターにはボーカロイドに関する情報ページが何窓に
も渡って表示されていた。
ふと近くの時計に視線を向けると思わずぎょっとした。
現在の時刻が深夜の3時を回っている。
普通ならもうとっくに就寝している筈の時間です。そう言おうとしたが、声は出
なかった。
それに、こんな遅くまで起きてなくてはならない原因を作ったのは、俺。その
本人がとやかく言える立場ではない。
こんな俺の為に、必死になっている姿を見ると申し訳無い気持ちが込み上げ
てきた。なのに、もういいと止める事が出来ないのはそれと同時に別の感情
が俺を支配したからだ。


「――カイト…?」


後ろにいた俺に気付いたマスターが画面から目を離してこちらを見た。心配
そうに俺を覗き込んだマスターは、そのまま俺の背中に手を回して子供をあ
やすように優しく背中を撫でる。


「カイト、そんな風に無理に笑ったりするな…」


マスターが辛そうに顔を歪めて言った。
笑ってる、と言われて自分の口元に手を当てる。確かに、自分は今、笑って
いるらしい。
どうやら無理に微笑んだように見えたようだが、笑っていた事にすら気が付か
なかったというのにそんな器用な事は俺には出来ない。
違うんです、と声に出せないから俺はゆっくりと首を横に振った。
マスターはそれを見てまた「無理すんなって」と呟く。上手く伝わっていないか
ったようだ。


(違うんです、マスター…)


俺は多分、本当に笑っていたのだと思います。
だって、声が出なくなってから、マスターは俺の事をずっと考えてくれている。
それこそ時間を忘れるくらいだ。
申し訳無い気持ちより嬉しい気持ちが強すぎる。だから俺はマスターを止め
る事もしなかった。


マスターの手の暖かさを感じながら俺は瞳を閉じる。



細い体が
暖かい手が
柔らかな髪が
黒く澄んだ瞳が
俺の名前を呼ぶ声が
――マスターの全てが



好きで、どうしようもなく好きで。
初めてマスターを抱き締めた時に感じた純粋な感情は、日が過ぎる毎に黒
くて狂喜に似たモノへと変わっていった。

 



きっと俺は、昔みたいに狂い始めているんです。



こんな感情、貴方に伝える訳にはいかないのだ、絶対に。

 

 







俺の背中を撫で続けるマスターの体をそっと抱き締めながら、俺はそう心中で
呟く。
いつものように、消去出来ないこの狂った感情を自分の奥底に押し込んで、二
度と出てこないように閉じ込めた。





慣れたその行為はまるで儀式のようで





08.8.27

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