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absolute zero

DRRR!!、タイバニに首っ丈な小説ブログ

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久し振りに小説…ですが

初音さん→マスター(男)です。いや、気分的にです。
ついに手を出しちゃたマスミク。…マスミク?
マスカイサイトなのに、なんかもう、すいません!










回る洗濯機。ソーセージのはぜるフライパン。冷蔵庫のモーター。動く度に起
こる衣擦れ。


何をするにも音が溢れるこの世界。
人が、動物が、植物が、世界に存在する全てが異なる音を奏でている。無音
なんてあり得ない。
溢れんばかりの音に掻き消された音も存在し、普通その音を聞き取ることは
出来ない。と、いうのに私の耳は的確に、正確にある特定の音を捉えてしまう
のだ。


今も、また。


耳が捉えた音の羅列。テレビから流れたそれは曲と認識され、さらに細かく分
類。マスターの曲と認識した後に私のフォルダへと刻み込まれる。今までのデ
ータと照合させてみたが今回の曲は初めて聴くものだった。恐らく、新曲なのだ
ろう。
朝食を作っていた筈なのに、私の耳がこの曲を捉えたその直後には何故かリ
ビングにあるテレビの前にいて。右手に菜箸を握っていて、戻らなくてはいけな
いのに音が気になって戻れない。
私はこの音を聴いているのが大好きで、だけど聴いていると他のことが出来な
くて。しなければならない事が溜まっていって、困っている。
ふわふわと夢見心地になるこの感覚。私は思わず微笑んで、でも同時に困っ
て眉を潜めた。困るけど嬉しい。ああ、なんて矛盾した幸せ。


この音が、私だけに向けられたものならもっと幸せなのに。

 

 





突然聞こえてきた物音で我に返った。気付けばマスターがまだ眠いのか瞼を
擦りながらのそのそとこちらに向かってきている。音の正体はどうやらマスタ
ーが椅子を引っ掛けた音らしい。物に当たってもまだうとうとしていられるのは
凄い。
私がリビングでぼんやりしていたのが不思議だったのか、マスターは首を傾
げて口を開いた。それを見た私は期待に胸を踊らせる。


「テレビの前で何を…あ!もしかして調子が悪いとかか!大丈夫か、大丈夫
なのか!?」


心配そうに声を掛けてくれるマスターに向かって異常は出てないと告げると、
今度は安心したのか長く息を吐いた。へにゃりと笑うマスターを見て、私も曖
昧だったが笑顔を浮かべる。
その間、音の溢れるこの世界にいるのに私の耳に入ってくるのはマスターの
声だけ。


「はー…良かったー」


「でも、なんかあったらすぐに言えよ?」


「でも、何かあったらオレ泣いちゃうよー…」


流れるように紡がれる声を私の耳は相も変わらずに正確に捉えている。
視界には安心したような表情で菜箸を持っている私の手を握るマスターの姿。
聴こえるのはマスターの声。
さっきと大きく違うことといえば音が私だけに向けられているということ。あっさり
と望んでいたことが叶えられてしまって。これ以上望むのは贅沢な気がした。


だけど、叶うならばもう一つだけ。



「マスター」


まるで催促するかのように呼べば、マスターは優しい笑顔で私を見て私の好
きな、そして強く望む音を緩く開いたその口から紡ぐ。


「何だ、ミク?」





その音を聴いて、私は心から満たされた気分だった。





                 幸せすぎて、死んでしまいそう!



(そういえば焦げ臭くないか?)(…マスター、目玉焼き作ってたの忘れてた…!)(な、なにー!?)






09.2.3

 

 

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