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absolute zero

DRRR!!、タイバニに首っ丈な小説ブログ

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実習不安で仕方ない

実習が近くなるのと、サンホラライブが近くなるので悲しんでいいんだか喜んでいいんだか分からない、卯月です。
たった一週間、されど一週間。正確に言えば5日の出来事が怖くて仕方ない。どうせボロクソに言われるんだ…っ!
多分、6月終わりか7月初めの日記は死んでます、そして死んでる!
取りあえずまた名札を作らなきゃいけないわけで。ドン・ヴァレンティーノの名札を使い古しちゃったから(爆)


それは兎に角。
続きはタイバニ話。何故、私は兎虎じゃないものを書いているのだろうか、訳がわからないよ!
これは、虎薔薇と書いたほうがいいのか、薔薇→虎なのか…











「ふわぁぁぁ……っい!」

トレーニングルームの壁に背を預け、欠伸を噛み殺しもせずに大きく口を開けていた虎徹が
突如小さく呻いて固まった。
欠伸をするなとは言わないけど手を当てるなりしなさいよ、等と
文句を口にしようとしていたカリーナだったが、虎徹が痛みを堪える様な声を上げて表情を微かに
歪めたのを見てしまい、言葉を引っ込める。
 
「…何、どうしたの?」
「…ん、口の端が切れたみてぇ」
「何してんのよ…」

ほら、と右の口角を指差され覗き込むと確かに切れているらしく、
見ていて痛々しい赤い線が一筋走っていた。其れほど深くは無いと思うが、
傷が開いたばかりだからかじわりとほんの僅かに血が滲んでいる。
カリーナは自分が切った時を思い出してしまい、顔をしかめた。

「いってー、またやっちまったなぁ」

折角治りかけてたのに、と虎徹は唇を尖らせながら頻りに切れた口の端を指でつついている。
傷を刺激するような行動が信じられなくてカリーナは思わずその手を制止した。
悪化させる気があるなら止めないが、否、あってもやはり見ていられなくて止めていたかもしれない。
手で傷を触ることはしなくなったが、やはり怪我の度合いが気になるらしく『い』の形に
口を動かしてみたり突き出してみたりやたら瞳を下に向けてみたりと、どうにか目視を図ろうとしていた。
気持ちは解らないでもないが、顔の構造上、見えたら怖いでしょうに。
心の中で突っ込みを入れたカリーナは未だに奮闘している虎徹に常に持ち歩いている
折り畳み式の手鏡を貸し与えた。
 
「お、悪いな」
「もう、鏡くらい携帯するべきなんじゃない?」
「良い年したおじさんに女子高生とおんなじ常識求めないでちょーだいな…」

げんなりした表情を作った虎徹は、可愛らしい鏡に映る傷を確認すると更に眉間に皺を増やした。
彼の相棒が機嫌が悪い時の様な表情にほんの少し似ている
。やはり一日の大半を一緒に過ごしていると似てくるのだろうか、なんて思うと同時に
胸の奥がちくりと痛んだ、様な気がした。

「しっかし、最近ホント頻繁に唇切れんだけど」
「ちゃんとケアしなさいよ、荒れてるわよ」
「えぇー…荒れるのはしょっちゅうだし、マメにケアするおじさんとか逆に怖くないか?」

ぱこん、と丁寧に閉じられた手鏡を受け取ったカリーナは、目の前のベテランヒーローが
矢鱈マメにスキンケア等を行う姿を想像してしまい思わず噴き出してしまう。
全く知らない壮年の男性が行う姿はあまり想像したくも無かったが、
知人補正か東洋人の童顔っぷりの所為か、虎徹に当て嵌めても何故か嫌悪感等は湧いてこなかった。

「怖いとか言ってる場合じゃないし、誰もおじさんの行動なんか気にしないわよ」
「それもそれで悲しいだろ…」
「もう、アンタ本当に面倒臭いわね!」

将にああ言えばこう言う状態の虎徹に対してカリーナが思わず本音を溢すと、
「酷い!」と涙目になりながらショックを受けられた。直ぐに拗ねる様子は、
カリーナよりも遥かに年のいった大人には到底見えず、寧ろ年下の子どもの様に映る。
良く言えば童心を忘れることの無い大人だが、同い年かそれ以下と同じ接し方の出来る
威厳の欠片も無い大人というのは如何なものだろうか。
そんな、欠点にしか成り得ない様な所作を行うのが虎徹だと、利点に思えるのが不思議である。
兎も角、今までの言い分から考えるに、虎徹はこのままでは自ら処置を行う事など絶対にあり得なかった。
カリーナからしたら、虎徹が痛いと喚こうが関係が無いので「勝手にしたら」と放っておけば良かったのだが、
相手が相手だからなのか、何故か訳もなく放っておけない気分になってしまう。
普段は彼の方がお節介と言われようと世話を焼く側だったので他人を気に掛ける意味が解らなかったが、
逆の立場になってみるとその理由が少し解ったような気がした。

「タイガー、これ」

カリーナは先程、手鏡を仕舞ったばかりの化粧ポーチからリップスティックを取り出すと、
呼ばれてキョトンとした顔を向けた虎徹へ差し出した。
なにこれ、と言いたげな表情でカリーナとリップを交互に見比べている虎徹の手に、多少強引に手渡す。
 
「ちょ、カリーナさん、だからなにこれ」
「薬用リップ!唇荒れてんでしょ?使いなさいよ」
「え、でもお前さんのやつだろ?新品っぽいし」
「私はまだ使い切ってないのあるから、」

見てて痛そうなの、と唇を指差して付け加えれば、暫く渋る様にリップを突っ返そうとしていた虎徹の方が
折れた。まだ新品で開いていなかったリップの封を切りキャップを外せば、微かにラベンダーの香りが漂う。

「……俺の知ってる薬用リップと違う」
「そりゃ、女子向けのやつだもの」
「リップ、色着いてんぞ!?」
「ナチュラルカラーだからあんまり変わらないわよ」

薬用リップって言ったらちっちゃいナースさんが印刷されてて云々と呟き釈然としない様子ながらも、
虎徹は慣れない手つきでスティック部分を回転させてリップを露出させる。
淡いピンク色をしたそれは、確かに男性、特に年齢が高い男性にはハードルが高いかもしれなかった。
観念したのか、恐る恐るといった風にリップを唇へと近づける。 

ゆっくりとした動作で唇の上にリップを滑らせる様は普段のおちゃらけたというか、
無邪気とも言える虎徹のイメージとは酷くかけ離れていて。
真剣な表情と僅かに伏せられた琥珀色の瞳が相まって、まるで別人の様に色香を纏っていた。

「…ん、」

すっ、と滑らかに動いていたリップが離される。
伏せられていた瞳がぱちりと音がしそうなほどはっきりと瞬いた。
無意識の内に注視していたカリーナの視線に気付いた虎徹が顔を上げる。
その際にばっちりと目が合ってしまい、カリーナは咄嗟に目線を逸らした。
合った瞬間に心臓が五月蝿く跳ねた気がしたし、何だか顔も熱い気がするが、
全て気の所為だと思い込むことにした。

「どーかしたのか、カリーナ?」
「!!」

端から見れば胸を押さえた状態で多分顔も赤くなっているだろうということに気付いたカリーナを
虎徹が心配そうに覗き込む。リップを塗ったばかりの妙に艶めいて見える唇が視界に入り
、更に体温が上昇して思考回路はフリーズした。
そんな事などお構い無しに「顔赤いし熱でもあるんじゃ」等と、
固まっていたカリーナの額に掌を当てられた所で我に返る。

「ね、熱なんて無いわよ!ほんっとお節介なんだから…」
「そっか?それならいいんだけどさ」

咄嗟に額に触れたままの手を払う様にして離れ、更に自らの行動を完全に棚上げする言葉を
投げ掛けてしまい、カリーナは自己嫌悪に陥った。それに対して虎徹本人は嫌な顔一つせず、
寧ろ安堵の表情を浮かべるものだから、益々後悔が押し寄せた。
心配をしてくれた相手に取る態度では無いとカリーナ自身も解っているが、
残念ながら素直に心配をしてくれて有り難う、なんて口に出来ない性分なのである。
どうしても、思ったものとは正反対の言葉しか口は発してくれないのだ。
素直に、素直にと呪文の様に呟くカリーナの葛藤なんて知る術の無い虎徹は、
使ったリップを戻しながら平然と一言、

「あ、これ返した方がいいのか?」
「ばっ…!」

それとも買って新品返す?と虎徹は続けたが、カリーナの耳には入ってこなかった。
その一言前があまりにも衝撃的過ぎて。
其処らの男が同じ台詞を吐いたなら、何を馬鹿な事をと冷めた瞳と言葉で一蹴するのだが、
如何せん、虎徹には悪気も下心も無い。
なのだから、軽く流してしまえば良かったのだが、カリーナにそんな高等技術は備わってはいなかった。

「か…返してもらっても使えないわよ、ばかぁ!」
「え、」
「あげるから有難く使いなさいよっ!」

顔を真っ赤に染め、自分でも理不尽だと思うくらいに勝手な言葉を投げつける。
呆然としている虎徹を尻目に、居たたまれなくなったカリーナは逃げるように
トレーニングルームから飛び出した。













「………あー、」

トレーニングルームを出て直ぐの廊下の壁に凭れ掛かり、ずるずると座り込む。
膝を抱える様に顔を埋めたカリーナは自己嫌悪に陥りながら小さく呻いた。
逃げ出す瞬間に見た虎徹の、驚愕し、困惑した表情を思い出して更に落ち込む。
困らせるつもりは毛頭無かったのに、きっと呆れられたに違いない。気分は失意のどん底である。
別に過剰反応しなければ何とも思われなかっただろう、そう考えてため息を一つ。
こんなことなら。今更な考えがカリーナの頭を過る。

「……やっぱり、返して貰えば良かったかも…」
 

返して貰っても恥ずかしくて、そして勿体無くて使えないだろうけど。
 
 
 
 
 
 
 


Repentance comes too late.
(後悔後先立たず)



(…どれを悔いても遅いんだけど、)
(最後のは…やっぱり貰っとけば…!)





11.06.10

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