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absolute zero

DRRR!!、タイバニに首っ丈な小説ブログ

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恵方巻きなんて習慣、家には無いが

スライディング土下座、卯月です。
節分で臨帝です。節分って駄目ですね、ネタが酷い!!
家は豆だけまきました。




 













「喜べ帝人!最近幸が薄そうなお前にコレをやろう。
今日限定の物だからな、しっかりと厄を追い払って福を呼び込むんだぞ!
まぁ、俺はそんな事しなくても自力で福という名の可愛い子ちゃんを呼ぶことが…
止めていきなり俺に投げ付けようとしないで!」

そんな僕にとって不名誉な事を言いながら正臣が節分豆を渡してきたのが今日の朝の話。
結局正臣には投げずに豆を鞄にしまった事を帰宅後に思い出した僕は、
結構な量の入った袋を取り出して首を捻っていた。
節分の豆は基本的にまくものだが、財政難の学生に食べ物を無駄にしろというのは酷な話である。
たかが豆、然れど豆。当分はおやつとして重宝しそうだなぁとまくという概念を早々に切り捨て、
袋を開けた僕は豆を一粒摘まんで口に放り入れた。
かりぽりかりぽり、小気味良い音が口から聞こえる。当日は年の数だけ食べるとか決められていたが、
守る気なんて更々無かった(素朴な味は時々無性に恋しくなるよね)
一気に食べるのも良くないと解っていながらもついつい袋に手を伸ばして豆を頬張る。
明日、正臣に何か聞かれたら「豆は全て美味しく頂きました」と返事してお礼を言おう(確実に
予定していたであろう用途と違うけど)
恰もハムスターのように豆を口に詰め込んでいた僕が、遂に喉の渇きを覚えて水を飲みに台所へ向かう。
その間も豆の袋は持ったままだった。
コップに注がれた水道水を口に含んで飲み込む。そのまま二度、三度と分けて水を飲んでいた僕の耳が、
部屋の外の階段を誰かが昇って来る音を拾った(二階の誰かが帰ってきたのかな)(お隣さんとか
滅多に帰ってこないけど)
がん、こん、と軽やかな足取りで近付いてくる足音は、あろうことか僕の部屋の前で立ち止まり、
(嫌な予感しかしない)

「帝人君!今日何の日だか覚」
鬼は外ぉぉぉ!!

扉が開いたと同時に、僕は手に持っていた豆を一握り引っ掴むと、
全力で投げ付けた(主に顔を目掛けて)(言っとくが、条件反射だったんだ)



これが今年、本日一回目の豆まきである。













「…君が今日は何の日か覚えてる所か、思いっきり満喫してたなんて予想も付かなかったよ」

扉を開けたと同時に放った豆を律儀に顔面で受け止めて下さった臨也さんは暫くその場で
ダメージを受けていたが、漸く立ち直ったのか何時もの様に皮肉を口に出した。流石に
予想していなかったからか、軽くショックだったらしい。少しご機嫌斜めなのが窺える(原因は僕だけど)
服の中に入り込んでいたのか、招き入れた臨也さんが動くと時たま豆が転がり落ちる。
勿体無い、と思わず呟くと「だったら人に投げないでくれる」と間髪入れずに突っ込まれた。

「確かに咄嗟に豆を投げた僕も悪いですけど、来るなら先に連絡してくださいよ」
「えー面倒くさい。気が向いたらでいい?」
「……もういいです」

彼から受け取ったファーコートをハンガーに掛けた僕は、我が物顔で寛ぐ臨也さんに
飲み物はお茶で良いですかと訊ねようとした時、その傍らにあったビニール袋の存在に気が付いた。
恐らくは臨也さんが持ち込んだ物だろうが、一体何なのだろう。
すると、僕の視線に気が付いたのか、臨也さんは放置のままだったビニール袋から中身を取り出して
僕に差し出した。
透明なプラパックにご飯に海苔が巻かれた、巻き寿司らしきものが入れられている。
切り分けられていないので太巻と呼ぶべきか。

「はい、これあげる」
「…恵方巻きですか?」
「そーだよ。生活難なのに節分を楽しんでた帝人君にプレゼント」

意外と根に持つタイプなのか、仕返しとばかりに嫌みが飛んでくる。
僕は否を認めたのだから許してほしいものである(まぁ、謝ってはいないんだけど)
しかし、プレゼントは嬉しいので素直に礼を告げた。特に食べ物は本当に助かる。
食費とか一食浮くだけでも大分違うのだ。
そんな僕の態度に少し機嫌が浮上したらしい臨也さんがにっこりと笑みを浮かべた。
僕の良く知った笑い方、これは、録でも無いことを画策している時の笑みと一緒だった。

「勿論、恵方巻きの正式な食べ方は知ってるよね?」
「え、っと…その年毎に決められた方角を向いてまるかじりして、
食べ終わるまで喋っちゃいけないってやつですよね」
「うん、正解」

因みに今年は南南東だよ。
さあ食べろ今食べろと言わんばかりの発言を続ける臨也さんが親切にも今年の恵方の向きまで
教えてくれた。気になるのは、南南東と言って指差した方角が僕から見て丁度臨也さんのいる方向に
なることで。否、きっと偶々そうなってしまっただけだろう。
態々風習に則らなくても切り分けて二人で分けて食べましょうよとか言える雰囲気では無かったので、
僕は仕方無く受け取った恵方巻きをパックから取り出した(早めの晩御飯だと思えば、まぁいっか)

…取り出した、のだが。

「……臨也さん、あの、」
「何?」
「これ、何か、大きくないですか」
「あぁ、うん。市販のじゃないからね」
「へ、」

市販のじゃない。それはつまりどういうことだ。
恵方巻きを両手で持ち上げてみたが、それでも重く感じる程に重量がある。こんなものにかぶり付いたら
顎が痛くなりそうだ。というか、一気に食べきれる自信も無い。確かに、食べる人の事を
全く配慮していない所を見ると、一般的に市販されていないと言われても納得出来る。
説明を求めて臨也さんに視線を向ければ、意図を汲み取ってくれたのか
「俺の手作りなんだ」と楽しそうに笑いながら付け加えてくれた。流石臨也さん、
何でも軽くやってのける、そこに痺れる憧れるーなどと言うとでも思ったら大間違いである。
そんな僕の心の声など聞こえない臨也さんは更に言葉を続けた(正直、もうこれ以上聞きたくない)

「自信作なんだよ!これね、俺のと大きさ一緒でさ」
「俺の、って…何と」
「何って、ナニと」
滅べ変態ぃぃぃ!

最低な事を言おうとした臨也さんの言葉を遮る様に僕は傍らに置いてあった豆を一握り引っ掴むと、
全力で投げ付けた(主に顔を目掛けて)(今回は自業自得だ)



これが今年、本日二回目の豆まきである。
残念ながら、二回とも内にまくのを忘れた為、
今年も福は入ってきそうにも無かった(入ってくるのは変態だけなんて!)












 



(あーあ、切り分けちゃって…あ!恵方巻きが嫌なら俺のにかぶり付いたら、)
(切 り 分 け ま す よ ?)
(……すいません)





11.2.3

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