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absolute zero

DRRR!!、タイバニに首っ丈な小説ブログ

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颯爽登場で綺羅星!

件名がおかしいのはデフォだと言い張る、卯月です。

コレは何なのかと言われると、アニメです。スタードライバーです。分からない人は日曜5時をチェック!
7話放送辺りからちゃんと見始めた卯月でしたが、坂を転がるようにハマったワケで。
で、9話放送時くらいから何故か小説を書き始めてました。めっちゃ時間掛かったけどな!!
スタドラで小説とか、何の前フリもなくてすいません。スガタクです…



 










紅に染まる教室を覗き込めば、既に誰も居ない。
帰宅時間は過ぎているのだから当たり前か。そう思いながら教室へ入り、
自分の席に足を運ぶ。机の中を手でまさぐれば直ぐに目的の物は見付かった。
そのまま一冊のノートを引き抜いた僕は、今度こそ忘れない様にと鞄の中にそれを仕舞う。
鞄の留め具を閉め、顔を上げるとベランダ越しにオレンジ色へと変化を遂げている海が視界に入った。
綺麗、と思わず呟いて教室とベランダを隔てているガラスにぺたりと掌を付ける。
ベランダ出ようかなとか考えながら、ふと、ガラス戸へ目を向けると丁度手を付いた辺りに
うっすらと小さな跡が残っているのを見付けてしまった(…何の、あと?)
自分の席より少し後ろ。それは、あの人妻女子高生を名乗る同級生、ワタナベ・カナコの席の
真横に位置している。
何の跡かを把握した途端、自分の顔が急に熱を持つのを感じた。
端から見れば耳まで真っ赤だっただろう(誰もいなくてよかっ、)

「――タクト、ノートは見付かった?」
「うわぁぁぁっ!?」

突如、背後から掛けられた声に口から心臓が飛び出しそうな程に驚愕して、
本当に何か飛び出るのではと思うくらいの大声を上げてしまった。直後、ガラスから手を離して
勢い良く振り返る。
振り返った先には、何時もよりも少しだけ瞳を見開いた状態で固まっているスガタがいた。
おかしい、彼がこんな場所に居る筈無かった。
何故ならば、僕はつい先程に気付いた忘れ物(言わずもがな、ノートの事だ)を取りに学園へ戻る為、
一緒に帰宅していたワコとスガタの二人と別れて来たばかりだから(僕、また明日って言ったし)
しかし、「あぁ驚いた、」等と表情にそぐわない発言しながら近付いてくるのは確かにスガタで。

「っ、スガタ」
「悪い、驚かせたか?」
「驚いたっていうか…どうかした…?」

スガタも何か忘れたの。そう訊ねれば、「ああ、まぁ、そんな所だよ」と妙に言葉を
濁された(なにその変な感嘆詞)
僕は訝しげに彼を見たが、それを受けても涼しい顔をしているスガタの視線が僕から僅かにずれる。
目を逸らされたのか、一瞬そう思ったが、どうやらそうではないらしい。――スガタの視線は、
先程まで僕が見ていたガラス戸に向けられていた(ぎゃあ、)(もしかして見られてた…?)
何か言いたげにスガタの唇が開かれたのを見て、僕は慌てて彼へ話し掛ける。

「いやぁ、流石は南の島だよね!教室からでも海がすっごい綺麗!」
「そうだな、夕刻の海は綺麗だと思うよ」
「ねー!あんな砂浜走ったらまさに青春の謳歌って感じ――」
「で、タクトはガラスに向かって百面相するのは止めたのかい?」

涼やかな笑顔を浮かべたまま発せられたスガタからの一言に、
僕は顔を両手で覆うと声にならない悲鳴を上げた(やっぱ見られてた!)
「耳まで真っ赤だな、」なんてのほほんと言い出したスガタを睨む。誰の所為だと思ってるんだ、
そんな思いを込めた筈なのだが、やはり物ともせずに微笑が向けられた。

「どちらかと言えばナシなタクトもやっぱり気になる?」
「……正直、キョーミは少し」

やっぱ健全な男子高校生ですし。誤魔化すのを諦めた僕は溜め息と共に開き直った。
幾らガラス越しとはいえ、グラマラスな女子と男子生徒のキスを間近で何度も見せ付けられて
気にするなというのは無理な話である。休み時間になる度に男子がやってくる辺り、
噂になっているというのは本当らしい(まぁ、あれだけ大っぴらにしてたら、ねぇ)
けれど、噂に便乗なんて考えても行動には移せそうに無いし、
興味本位でこんなことをするのにも抵抗があった。
ほら僕は純情少年だし、と茶化せば、スガタに「確かに、」と笑い飛ばされる。
言い出したのは自分だが、同意されると少し複雑だ。
一頻り笑ったらしいスガタが、再びガラスに目を向ける。その途端、彼の瞳がほんの一瞬だが
不安定で不穏な輝きを湛えたような気がした(…光の加減かな)

「僕は興味本位、大いに結構だと思うけれど」
「わお、スガタ坊っちゃんったら積極的ー」
「折角だ、試してみる?」
「あぁ、うん、試して…へっ?」

さらりと告げられた言葉に対して咄嗟に相槌を返してしまったが、
その言葉の意味が時間差で脳まで到達した瞬間、僕自身がフリーズした。









紅に染まる教室でガラスを隔てて向かい合わせに見つめ合う生徒二人。
何て夢のあるシチュエーションなのだろうか。
――但し、ガラスを挟んだ向こうに居るのが男子生徒という点を除けば、だが(どうしてこうなった!)
ガラスの向こう側で此方を見詰めるスガタの視線に、僕は何だか気恥ずかしくなって若干俯いてしまう。
その途端にコツン、とガラスを軽くノックされて「俯いたら意味がないよ」と苦笑混じりに
注意された(何で君はそんな平然としてるの!)

「あのぅ、スガタ…」
「どうした?」
「物凄く今更なんだけど、スガタは抵抗無いの…?」

言われるまま流されるままに此処まで準備してしまったが、今ならまだ止められる。そう考えて、
しどろもどろに訊ねれば、スガタはキョトンとした顔で首を傾げた。

「だって、実際にはガラスだろう」
「や、確かにそうだけどね!」
「気になるなら目を瞑って別の相手だと思えばいいんじゃないかな?」

気になってる女子とか、とあっけらかんと言われて自分だけもやもやと悩んでいるのが
段々と馬鹿らしくなってくる。確かに、たかがガラスと言われてしまえばそれまでだし、
妙に意識するから抵抗があるだけなのかもしれない(…多分、きっと!)
相手は女子、相手は女子…と呪文の様に呟きながら、どうにか持ち前の前向き思考へと切り替える。
そう、いっそのこと此は練習だと思えば良いのだ。軽く現実逃避に近い気もするが、
とにかく腹をくくった僕は床ばかり見ていた顔を上げた。

恐る恐るガラスに近付くと、そっと両の手を添える。控えめに触れたガラスは熱を持たず、
ひやりと冷たかった。
ほんの少し近付いただけだというのに、やたらと僕らの距離が縮まった気がする。
何故なら、スガタの顔が間近にあるように感じるからだ。近くで見ると、
彼は本当に眉目秀麗という言葉が似合うな、と改めて思わされた。
真っ直ぐで癖の無い、鮮やかな青の髪に色素の薄い真白い肌。
睫も長く、その奥には不思議な輝きを湛える琥珀の瞳。

「…タクト」
「な、何っ!?」
「何、って。するんだろう?」

だから目を閉じて、と低く響く美声が僕の耳元近くで囁かれる(ガラス通してる筈なのに!)

言われた通りに目を閉じた。たった其だけで動悸が激しくなる。
ばくばくと大きく鳴り続ける心臓が煩いし、痛い。

僕はこの痛みと緊張から解放されたくて、しかし緩慢な動きでガラスへと唇を寄せた。

先程、指先で触れた冷たさを今度は唇で感じる。
やはり、スガタが言った通りただのガラスの感触しかしない。当たり前と言えば当たり前だが。
唇を離した際に軽いリップ音が鳴って居たたまれなくなった僕は、
口元を手で押さえながら閉じていた目を開ける。丁度、スガタが僕と同じようにガラスから顔を離すのが
視界に入った(何か、気恥ずかしい!)
彼方も唇を押さえる僕を視界に入れてか、にっこりと笑みを浮かべる。余裕綽々な様子が腹立たしい。

「――どうだった?」
「どう、って…」
「タクト的にガラス越しはアリだと思った?」

また答え難い質問を、と僕は未だ熱い顔をしかめた。後で逆に質問し返してやろう、
そう思って手を当てたままの口を開く。

「キスの感触はやっぱ、ただのガラスだったし…でも、」
「でも?」
「…途中からスガタの事でばっか考えてて、妙にドキドキして…」

アリかナシなんてよく解らなかった。
相も変わらず口を押さえた状態でそう答えれば、何故かスガタが動揺したみたいに瞳を見開いた。
夕陽の所為で赤の混ざった琥珀色がゆらりと不安定に揺らめいて、その輝きを変える。
直ぐに動揺からは立ち直ったみたいだが、スガタの表情に何時もの微笑が戻らなかった。

「僕は、ガラス越しはナシだな」
「え、」

何で、と僕が口にするよりも前に突如として目の前の、僕とスガタを隔てていたガラスが消失する。
スガタが戸を開け放ったのだと気付いた時には僕の腕は彼によって掴まれていた。
見た目よりもずっと強い、痛いほどの力が腕に掛かる。というか強すぎて痛い。
腕を離すようにと僕が口を開いた瞬間、スガタが急に距離を詰めてきた。
先程の様に間近に感じるのではなく、実際に秀麗な顔が眼前まで迫っていて。
反射的に離れようとしたが、僕を掴んだ彼の腕がそれを拒んだ。

「スガ、」

静止の意味を込めて呼んだ彼の名前も、全て声になること無く消える。
何故なら、声が発せられる筈の唇が何かで塞がれたからだ。

先のガラスの様にそっと、しかし、ガラスと違って血の通った温かさが唇に伝わる。
その温もりは直ぐに唇から離れた。それに従って間近にあったスガタの顔も僕から離れていく。

触れただけとはいえ、キスをされたのだと理解した途端、自分の顔が急に熱を持つのを感じた。
目の前の彼から見れば耳まで真っ赤だっただろう(…あれ、デジャブ?)
彼はそれを笑い飛ばす事はなかったが、何故かやたらと瞳が据わっていて。
それでいて、何処か吹っ切れたような顔をしていた。

「噂を利用するだけのつもりだったのになぁ、」
「…す、スガタ、さん?」
「流石にガラス無しの意味は解るよね、タクト?」

彼の問い掛けに対して咄嗟にいいえ、と首を振って答えてしまったのは何故だろうか。
パンクして情報処理が大幅に遅れている頭で僕は考えた。
ガラス無しの意味。
その行為に嫌悪感も無かった事実。
熱を僅かに孕んだ琥珀。
やたらと高鳴る自分の鼓動(まさか、僕も?)
しかし、これ以上続けられたら後戻りが出来ないのもまた事実で。
聞いてしまえば二度と戻れない、そんな気がした。

それでもスガタは無慈悲に口を開く。


「ねぇ、好きだよ」


だから、覚悟して。
そう僕に囁いた彼の言葉に、治まらない鼓動を押さつけて宥めながら、過去の自分を悔やんだ。




あぁ忘れ物さえしなければ、と(そうすれば彼への想いも目覚めなかったかもしれないのに)













(友情を壊して手に入れた恋、)
(ある意味では青春の謳歌って言えるのかな?)



10.12.18

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