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absolute zero

DRRR!!、タイバニに首っ丈な小説ブログ

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新年早々、どうしてこうなった

久々の臨帝です、卯月です。
赤い糸テーマにするのっていいよねーとか考えながら書きました。
…あるぇー?

少し注意がいるかもしれません。流血的に。















朝起きれば右手に感じる違和感。

まだ覚醒しきっていない状態だったが右手を確認する為に首を巡らせれば、
昨晩には覚えの無いものが指に絡まっていた。

小指の根元に、赤く細い糸がしっかりと蝶々結びにされている。
それは小指から始まって、長く長く続いていた。糸の先へ視線を向けると、
部屋の中では終わらずに玄関の扉の更に向こうへと消えていた。

準備もそこそこに玄関を出れば、地面を這う赤い糸が意識せずとも視界に映る。
何処まで続いているのか知らないが、糸の先には終わりが見えなかった。
糸の行方を辿っていくと、それは池袋では比較的閑静な住宅地を抜けて、路地裏を抜けて、
遂には人が絶え間無く行き交う大通りへと出てしまう。だというのに、糸はまだまだ続く。

此所まで追って気が付いた事が三つ。

一つは、確りと小指に絡み付いている感覚のある筈の糸は何故か物質をすり抜ける性質を持っていた。
益々不可思議な現象に思えたが、自分が今までに体験したことに比べれば、あまり驚く事でも無いか。
そう感じてしまう位には感覚が麻痺していた(セルティさんとか、平和島さんとか、)

一つは、此れは大半の人には見えていないらしい、ということ。
すれ違う人々は此方を気にしたりしない。たまに明らかに地面を
――正確には糸を見つめる人もいたが、特に驚いている風では無かった。

最後の一つは、糸は自分の小指から垂れる一本のみではないということ。
何が条件かは解らないが、他人の指にちらほらと赤い物が見えるが、自分の物と違い、
幻の様に薄ぼやけている。理由は考えても解るわけがなかった(考えるだけ無駄だよね)




歩いて歩いて、溜まった疲労に嫌気が差して足を止める。糸はまだまだ終わりが見えない。
もしかしたら先は何処までも、果てまで続いていて、辿るだけ無駄なのかもしれない。
そんな事を考えて、ふと顔を上げた。
つ、と今までに自ら動きはしなかった糸が突然、緩やかに向きを変える。
何故、と思ってそちらへ視線を向ければ、綺麗な黒髪を持つ女の子が一人。
自分に似た雰囲気の大人しそうな子だが、知り合いではないし、見たことも無い。
だが、今まで辿っていた赤い糸は確かに彼女へと繋がっていた。
彼女は糸に気付いていないのか、此方を見ることもなく、人混みへと消えて行く。
思わず目で追ってしまったが、努力も空しくあっという間に見失ってしまった。






自分の指に糸が見えたのは一日だけで、その後、あの少女と接点が有ったかと言えば断じて無い。
只の夢だったのか、はたまた自分の願望が作り出した幻なのか。
兎に角、普段では絶対に体験できない事をしたのは間違いない。
赤い糸って本当にあったんだと思う反面、かといって運命の、とか結婚相手を結ぶ、とかの噂は
どうにも信用出来なかった。相手が全く知らない子だったのも、
信用出来ない要因である(知ってる人なら未だしも…)
これもまた噂からは逸脱した一つの非日常だろう。兎に角、そう思って気にしない事にした。









気にしない事にした、筈だったのに。







朝起きれば右手に感じる違和感。

まだ覚醒しきっていない状態だったが右手を確認する為に首を巡らせれば、昨晩には覚えの無い、
しかし見覚えはあるものが指に絡まっていた。
前に見たもの全く同じだが、今回は何だか様子がおかしい。
赤い糸は確かに小指にあるのだが、幾重にも巻かれて雁字搦めにされていた。
小指を覆い尽すような勢いの糸は自分の意思ではほどけず気味が悪い(なに、これ…っ)
どうしてこんな事に。小指を見詰めたまま思考を巡らせていると、突然、
おとなしく畳に垂れ下がっていた糸が緩やかに浮いた。糸の続く先に視界をやれば、
それは玄関の戸の中央を突っ切っている。

どん、どん。玄関に目を向けてから間を開けず、控え目に、だが確かに二回、扉がノックされた。

思わず肩を震わせて、咄嗟に声が漏れそうになった口を塞ぐ。
次いで、ドアノブを捻られるが勿論鍵が掛かっているため、扉は開かない。
覗き窓から誰がいるのか確認した方が良いかもしれないと思い始めた時、
かちん、と扉が軽い音を立てた(うそ、なんで)

「――帝人君」

無慈悲にも開けられた扉に呆然としていた僕の耳に、よく知っている声が飛び込んでくる。
この響くような低音は、

「いざや、さん?」

小さく掠れた声で名前を呟けば、思った通り、黒のジャケットを纏った彼が姿を現した。
何時もと同じ様に人を喰った様な笑みを浮かべながら。
ここの合鍵を持っている臨也さんなら、閉まっていた扉を開けられる。
勝手に入ってくるのも日常茶飯事だ(悲しい話だが)
その事に少し安堵したが、彼の右手にも赤い何かが見えて、思わず身を固くした。

「臨也さん、右手、どうかしたんですか…?」
「右手?」

僕の言葉で右手を前に出した臨也さんは、小指を見つめると嬉しそうに笑う。

彼の右手の小指。その根元には細長い糸が蝶々結びにされている。糸は赤い、というよりも赤黒く、
ゾッとするような色をしていた(まるで、酸化した赤のような)
それは、臨也さんの指から長く垂れ下がっている。その先は僕の右手へと、

「帝人君」

再び名前を呼ばれる。弾かれたように顔を上げれば、蕩けた笑みの、
しかし紅暗く濁った瞳をした臨也さんと視線が合った。
楽しそうに、愉しそうに笑う彼の右手で赤黒い糸が揺れる。

「なん、で、いざやさん、糸が、」

喉が貼り付いて声が途切れる、声が震える。その所為で言葉が不明瞭になってしまったにも拘わらず、
意図を察してくれた臨也さんは何でもない風に口を開いた。

「なんで、っておかしな事を聞くんだね帝人君。君と俺が繋がっているのは当たり前、絶対なんだよ。
あんな女が君と繋がってるのは相応しくない。だから切ったんだよ、君と彼女を、糸を、小指を!」

やめて。確かにそう口に出したかったのに、喉は貼り付いたままで上手く発音出来ない。
頭ではけたたましく警鐘が鳴り響いていた。
更に臨也さんは続ける。

「指切り離しても糸は無くならなくてさぁ。帝人君と繋がってるモノは棄てらんないしで
どうしようって思ったんだけど、物は試しでその指を胃に収めてみたんだよ。
本当はこんな女の一部なんて口にしたくもないけど、思った通りだったよ」

こうして君と繋がれたんだから。
そう言って口許を歪めた彼の、その狂気に染まった表情を見て僕は恐怖に震え上がった。
血の気は失せ、歯の根はカチカチと合わない。怖いのに、目は逸らせない。
歯が合わさる音が鳴り続ける口を押さえた手の小指から垂れる糸がいつの間にか可愛らしい赤から
黒に近い赤へと変化を遂げていた。この色は、


「これで、俺達は永遠に一緒だよね」


僕と彼を繋ぐ糸の色は、血液が酸化した物に酷似していた。










アカイ イト



(小指から垂れてるのは糸なんかじゃない)
(今や、鎖じゃないか)




11.01.05

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